2021/10/9 vol.5 サラ

どうしたって周りはあなたをジャッジする。

だったら本当の自分でいたい。

ー昔は性別は2つしかないと思っていた

ー性別よりも、素敵な時間を過ごせるかどうか

ー「サポートしたいし、一緒に喜びたい。」母の愛・サポートの大切さ
 
LGBTQIA+でいうところの、“P”??

青文字:LIVABALL

黒文字:サラ

LGBTなどという単語、専門用語を使わずに自己紹介、自分を説明してください!

22歳イタリア出身の、サラ・ピッチと申します。

NYには4年前に来て、ダンサー、振付家、そしてソーシャルメディアプランナーとして活動しています。

私は物事とか人々など、色々と分析するタイプですね。あとは動物が大好きです!

尊敬と愛の名のもとに人を愛するので、相手のジェンダーやセクシュアリティは関係なく人を愛します。



世界観=選択肢の広がり

自分はおかしくないことを知る

ーほうほう…それはどういうことですか?たとえば男性も女性も好きになるってこと?

昔は2つの性別しか存在しないと思っていたので、そう思っていました。

でも今は少し違って、誰かのことを好きになる時に性別のことは考えないんです。素敵な時間を共に過ごせるのであれば、性別は関係ないんです。

ーなるほど!なんでそのように変わったんですか?

少しずつですね。

いろんなレイヤー(層)が積み重なって、今にいたります。

ー少しそのレイヤー(層)について聞かせて下さい!

小学校の時おままごをよくしていたんですが、その時女の人とのスキンシップに違和感がありませんでした。

 

その後ミドルスクール(11〜13歳。日本の中学校のような存在。)に行きました。イタリアでは挨拶としてキスをするんですけど、女性はきれいだな、魅力的だと思いました。



なるほど、小さい頃から気づきになる気っかけが多かったんですね。

可能性として、自分は女の人といれるんだろうなと思ってはいましたが、当時はまず選択肢にはありませんでした。

“ご利用可能” と “ご利用不可” のライトが2つあるような感じで、女性の方にはそのご利用可能のライトが点灯してなかったんですね。

ーでは、何がきっかけで選択肢が増えたんですか?

高校ですね。

私は田舎に住んでいたんですけど、私の高校は都会にあって、そして芸術系の学校だったんです。なので高校で環境がガラッと変わりました。

 
高校では初めての彼氏が出来ましたし、クラスにレズビアンのカップルがいたんです!


そして自分自身にも彼女できました。

「女性と付き合ってもいいんだ。」という、消えていた“ご利用可能ライト”が点灯した感覚ですね。

ーライトが点灯したんですね!
ちなみに、イタリアは保守的な文化だと前回のゲストから聞きましたが、同性のカップルを見かけることはとても珍しいことなのでは?

そうですね、街中でゲイのカップルが堂々と手を繋いで歩いているということはあまりありません。特に昔はそうでした


でも私の高校は比較的他の場所より過ごしやすく、友達からも先生からも、同性カップルも異性カップルと同じように扱ってもらえていました。


宗教の先生は厳しかったので、宗教の先生をのぞいてですけど。



なるほど!保守的な環境でも芸術に特化した環境ではオープンに過ごせる人もいたんですね。それはあなたにとってとても大きな変化・世界が広がったような感覚なのではないでしょうか?
そこで、男性も女性も好きになっても良いと、すっきりはっきりしたのですね!

ちなみに当時、同性を好きになる人達がいることは知っていましたか?知ってはいてもやはりおかしいことだという認識でしたか?

テレビなどでは知っていました!おかしいこととも思ってはいませんでしたが、まさか自分の人生に関わってくるとは思っていなかったですね。

「女性も好きになって良い」から、「性別は考えない」のステップへ

その後、次は「性別を考えない」と変化したとのことでしたが、そのきっかけなどはなにかあるの?

たくさんのジェンダーの人が存在することを少しずつ自分で勉強していきました。

 

ジェンダーを特定させたくない人や、様々なジェンダーを移りゆく人や、性別は男性/女性2つしかないという枠にあてはまらない人などがいることを知っていきました。

 

そしてNYに来てアイカと出会ったのですが(*サラはLIVABALL代表アイカのフィアンセ)、彼女の調べ物をきっかけに、「パンセクシャル」という言葉を知りました。

それまではバイセクシャルが一番包括的だと思っていたけど、そこに書かれていたパンセクシュアルの定義はもっと広く、より自分に適していると思ったんですね。

 

知ることって、とても大事ですね。知ることが自分の世界や可能性を広げ、自分だけでなく周りの人も生きやすくなることに繋がるなと思います。

 

でもパンセクシュアルという言葉は、あくまで他人に聞かれたらそう答えるだけで、私的には使いたくはありませんが。

補足しますと、パンセクシュアルというセクシャリティは好きになる人の性別は問わず、男女以外のあらゆるジェンダーも対象になるセクシュアリティです。好きになった人の身体や性自認がなんであれ、「好きになった人が好き」ということです。

ーパンセクシュアルという言葉を使いたくないということですが、それはなぜですか?

だって私は私だからです!

自分になんのラベルも付けたくありません。みんな一人ひとり違うんだから、ラベルを付けるならその人一人ひとりのラベルが必要です

ー確かに!みんな違うんだから、「ラベルをつけるならそれぞれに必要」に賛成です!

でもそう思えるのって、特に保守的なイタリアでは簡単な事ではないのでは?

そうですね、イタリアには聖地があるし、またカトリックでもあるので宗教的な要因もありますが、クローズマインドという要因もあります。新しいことに恐怖を覚えるような文化です。

イタリアでは同族種的な人、同じような価値観の人としか関わらない傾向があります。

 

なので、ゲイはゲイの場所にしかいない。よって、そのような情報も得にくい。

 

なので、実際に父方の親戚には縁を切られました。

「アーティストであるのみならず、イタリア人のくせにイタリアを去ってNYに行き、さらに女の子が好きだと!?もう無理!!」的な(苦笑)



いつも人と違う自分…でもなぜそんなに強い意志を持てるのか。

え!?縁を切られた!?

なのになぜ「自分は自分」って思えるんですか?すごく保守的な環境の中で「自分」をオープンにする価値観を持つのは難しいように思います。ありのままの自分でいることで、また誰かに嫌われないかなとか不安になったりしませんか?

実はそんなに難しくはありませんでした。

 

それはきっと、どうしたって周りはあなたをジャッジするから、だったら本当の自分でいたほうが良いと知った経験があったからと思います

 

というのも、私はいつも周りと違っていました。

13歳位の時、周りの女子たちはイケイケの女子たちでした。でも自分は違っていたからよく思われていなくて、はじき出されたんです。

だからその子たちと同じようにしてみました。

すると今度は、「偽物だ。調子に乗ってる。」と、それはそれで嫌われてしまったんです。じゃあどうせ嫌われるなら、“嘘の自分”でいるより、“本当の自分”でいたいと思ったんです。

ーなるほど…。どのように周りといつも違ったんですか?

いつも皆と違うと感じていました。ダンサーとして、生徒として、友達としても。周りも、「あなたは違う」とことあるごとに私に言っていました。

大抵は良い意味で言ってくれていたのですが、なんで私は違うのかいつも不思議に思っていました。また、違うということはユニーク(個性的)であるという良い意味でもあるけれど孤独ということでもあり、少し心が痛かったのも不思議に思っていました。

ーそれはとても辛かったのではないでしょうか…。どうやってやり過ごしたんですか?支えになってくれる人がいたんですか?

 

そうですね大変でしたね。

でも幸いなことに、いつも母のサポートがありました。

母はいつもあなたがどんな人になりたくても、何を好きでも、あなたが周りの人をリスペクトした上であなたが好きなことをしているのであれば、お母さんはいつもサポートするよ。 と言ってくれていました。

「いつもサポートしたいし、あなたと一緒に喜びたい」

母の愛

ー素敵なお母さんの言葉ですね!ではカミングアウトも大丈夫でしたか?

はい。実は気付いていて、早く言って欲しかったそうです。カミングアウトはほんの一年前に自分のセクシュアリティは言わずに、単に「アイカと付き合っている」とだけ言ったのですが、とても喜んでくれていました。

というのも、母は子供の幸せは共有して一緒に喜びたいタイプなんです。

母にとっては、「私が幸せで愛する人がいる」ということを知るのが、一番大事なことなんです。

 

なので、50年以上未だに同性愛者ということを親に言えていない同僚の相談を受けた時も、母は「私だったら、50年間も子供の幸せなひと時を一緒に喜んであげれなかったとか、サポートできなかったというのがとっても悲しいな。」と言ってその同僚が親御さんにカミングアウトする励ましをしたそうです。

ー本当に素敵なお母さんですね。ではサラさんがカミングアウトした時も本当に嬉しかったでしょうね。

お父さんも大丈夫でしたか?

父は保守的でクローズマインドな家族出身だったので、実は少し心配していました。

でも私の父は「君が幸せだったらなんでも良いよ!」というタイプなので、大丈夫でした。

サポートの大切さ

どんなサポートがあれば良い? 

ーお母さんのそのサポートがあるかないかでは大分と違ったのかなと思います。つくづく、サポートってとても大事だなと思います。

 

自分が他の多くの人とは何かが違うと悩んでる人はたくさんいると思うのですが、周りはそういう人に対してどう関わることがサポートにつながると思いますか?

何者であるかについて彼ら自身が決断したことを支え、彼らが考えたり間違ったりする時間を与えてあげることが大切だと思います。

なので、その方たちが自身のアイデンティティについて悩んだり、考えたりする時間と環境を守ってあげてほしいと思います。

自分の大切な人が、そのように自分を守ってくれているんだと思えることが、とても嬉しいと思います。

 

たとえば、子供とアイスクリーム屋さんに行く時、早く決めるように言ったりこの味にしなさいとか、いつも同じ味にしなさいと押し付けたりはしないですよね。きっと、選ぶ時間を与えると思います。色々試して、たまにはマズいのを選んでしまうこともあると思います。そしてそのうち、どれが一番好きか分かるようになりますよね。でもこれって長い過程なので、忍耐は必要になってくるかと思います。

 

少なくとも私は、「家族や友達がそうやって私のことを見守ってくれている」と感じたいです。

サラから皆さんへのメッセージ

私は、いろんなことを共有してお互いを尊重しあうことが本当の愛だと信じています。

全てを共有しない愛は、本当の意味で満ち溢れた愛ではないと思います。私の母にとっては、その本当の愛がなによりも一番大事なことでした。

愛・サポート・リスペクトの大切さ。

これらをお伝えすることが出来ていたら、とても嬉しいです。

このような機会を設けていただき、ご視聴頂き、ありがとうございました!



おわりに

【私は私。みんな一人ひとり違う。自分になんのラベルも付けたくない。付けるならその人一人ひとりのラベルが必要だから。】

と強く語ってくれたサラ。
そんな彼女も以前はダンサーとして、生徒として、友達として…となにかにつけて周りと違うことに悩んでいましたが、

【どうしたって周りはあなたをジャッジする。だったら本当の自分でいたほうが良い。】

という考えに。
同性のパートナーがいたりなど、“違うこと”で親戚に縁を切られもしたそうです。
それでも生きてこれたのは、

「あなたがどんな人になりたくても、何を好きでも、あなたが周りの人をリスペクトした上であなたが好きなことをしているのであれば、お母さんはいつもサポートするよ。」

といつも言ってくれていた母の存在のおかげと言います。

そんなサラのお母さんによる、”子にカミングアウトされた母として”の、同僚へのアドバイスのすてきな言葉に感激した方もたくさんいらっしゃいました。

“まわりと違う” ということに悩む方々は、たくさんいらっしゃると思います。
そんな私たちに自信をもたせてくれた彼女の言葉の数々。
視聴者様からのコメントにも、「自分自身にも迷いがあったが、恋愛とか性の定義にとらわれず、ありのままの自分でいることに自信が持てました。」
「誰にでも変化が起きたり気づいたりしていってもいいんだよと教えてもらった気がします。」
と頂きました。

どんなサポートがあれば良いかという質問には、LGBTQA+など言いにくいことで悩んでるお子さんを持つ親御さんにも参考になる回答を頂きました。
「自分のアイデンティティについて悩んだり、考えたりする時間と環境を守ってあげてほしい。
自分の大切な人がそのように自分を守ってくれてると思えることがとても嬉しい。」と。

「いろんなことを共有してお互いを尊重しあうこと。それが本当の愛。」

その大切さをたくさん教えてもらった、とっても愛情にあふれる回でした!

ありがとうございました!

視聴者さまご感想

みんな、ちがう。

だから、いい!